ポートフォリオマージンは、リスクベースの証拠金ポリシーです。ストレステスト(原資産のマーク価格および推定変動率)を使用して、ポートフォリオの全体的なリスクを計算します。ストレステストでは、デリバティブポートフォリオにヘッジポジションが含まれる場合、必要な証拠金を部分的に相殺できます。具体的な相殺額は、ストレステストの結果によって決定されます。
現在、ポートフォリオマージンモードは、統合取引アカウント(UTA)で利用可能です。UTAでは、USDTデリバティブ、USDCデリバティブ、現物の間でリスクヘッジを行えます。ただし、ストレステストが使用されるのは、デリバティブの証拠金計算のみです。借入およびマイナスの現物残高の証拠金計算については、UTAのクロスマージンモードとポートフォリオマージンモードで同じ方法です。
ポートフォリオマージンの利点
個々のポジションに基づいて計算されるクロスマージンとは異なり、ポートフォリオマージンはポートフォリオ全体のリスクに基づいて計算されます。ヘッジポジションを含むバランスの取れたポートフォリオを維持している場合、ポートフォリオマージンモードを利用すると、必要な証拠金をクロスマージンモードよりも大幅に減らせます。
ポートフォリオマージンモードにおける証拠金計算
ポートフォリオマージンを利用する場合、全体的な証拠金要件は2つの部分から構成されます。
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すべてのデリバティブポジションに関する証拠金要件の合計(以下の手法で計算)。なお、現物資産をストレステストのシナリオに含めるには、マージンモードの選択時に現物ヘッジ機能を有効にする必要があります。
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すべての借入資産の証拠金要件(クロスマージンモードと同じ方法で計算)。
維持証拠金
デリバティブでアクティブ注文がない場合の維持証拠金
統合取引アカウントでは、同じ原資産の現物、USDCデリバティブ、USDTデリバティブは、同じリスクユニットで計算されます。
BTCとETHを例に説明します。
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BTCUSDC、BTCUSDT、BTC現物資産は、同じリスクユニットで計算されます。
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ETHUSDC、ETHUSDT、ETH現物資産は、同じリスクユニットで計算されます。
ポートフォリオマージンモードにおける維持証拠金の計算式は、以下のとおりです。
維持証拠金 = 最大損失額 + 偶発損失引当金
1. 最大損失額
Bybitは、各リスクユニットについて、原資産のマーク価格の動きと推定変動率(IV)を評価します。それに基づいてストレステストを行い、さまざまな市況下での最大損失額を分析して、ポートフォリオに必要な証拠金を算出します。ストレステストのシナリオは、リスクユニットによって若干異なる場合があります。
例1
トレーダーAは、3 BTC売却コールオプションを保有しています。オプションの詳細は以下のとおりです。
原資産価格:30,000ドル
IV:100%
オプション価格:1,000ドル
失効日:30日間
原資産:BTC
ストレステストのシナリオにおけるオプション価格変動幅の推定値:
高値:33,000ドル
安値:27,000ドル
IV:120%
上記のパラメータ推定値に基づくと、ストレステストのシナリオにおける予想オプション価格は2,500ドル、最大損失額は4,500ドル = (2,500ドル - 1,000ドル) × 3と算出されることが想定できます。これは、このポジションの証拠金が4,500ドルであることを示しています。
ただし、田中さんが同時にロングポジションの無期限契約を保有している場合、無期限契約の最大損失額は-3,000ドル = -(33,000ドル - 30,000ドル) になります。このシナリオにおいて、田中さんのアカウントの最大損失額は、1,500ドル = 4,500ドル - 3,000ドルとして計算されます。このように、ポートフォリオマージンでは、必要証拠金が4,500ドルから1,500ドルに減少しています。
無期限契約でポジションを保有している場合と同じく、UTAで+1 BTCの現物を保有し、現物ヘッジ機能を有効にしてある場合も、証拠金に対して類似のヘッジ効果が生じます。その結果、ポートフォリオマージンモードでの必要証拠金は、約1,500ドルに減少します。
上記のとおり、ヘッジポジションを保有していると、証拠金要件は大幅に減少します。また、市場のボラティリティが高い場合、最大損失額の推定値は、ボラティリティが低い場合よりも大きくなります。つまり、市場が比較的安定していてIVが低い場合には、より多くのヘッジポジションを保有可能になり、利益を拡大できます。
逆に、市場が不安定でIVが高い場合には、最大損失額の推定値は増加します。トレーダーの資金の安全を守るため、保有できるポジション数は制限されることになります。
満期間近のオプションに関するプリセット価格下落率
オプションの受渡し価格は、満期30分前から時間加重平均価格を用いて計算されます。そのため、決済期間中は、原資産に対するオプションの最終価格の感度(デルタ)は小さくなります。この期間中、シナリオテスト計算で使用されるプリセット価格比率は、満期が近づくにつれて縮小します。それに伴い、維持証拠金は減少していきます。この期間の計算式は、以下のとおりです。
プリセット価格下落率 = プリセット価格比率 × (満期までの秒数 ÷ 1,800)
計算に15%を使用するシナリオにおいて、オプションの満期まで15分と仮定すると、実際にテストで使用される比率は以下の計算式により7.5%になります。
15% × (900 ÷ 1,800)
2. 偶発損失引当金
市場のボラティリティが極端に高い場合におけるポジションの最大損失額に加えて、偶発損失引当金もリスク管理で利用されます。これには、追加証拠金が必要となる際に備える目的があります。
偶発損失引当金は、以下の5つの部分で構成されます。
A. ショートオプション準備金:この証拠金は、コールオプションまたはプットオプションの売りを保有している場合に必要になります。
計算式
ショートオプション準備金 = ネットショートオプション額面価格 × ネットショートオプション係数 × インデックス価格
*個別のネットショートオプション係数については、ポートフォリオマージンに関するマージンパラメータのページをご覧ください。なお、極端な市場環境においては、ネットショートオプション係数が調整される場合があります。
B. ベガスプレッド準備金(オプション):この証拠金は、満期日が異なるコールオプションおよびプットオプションに対して必要になります。
計算式
ベガスプレッド準備金 = プラス/マイナスのベガポジションの時間差 (日数) × ベガヘッジ数量 × ベガ準備金ファクター × インデックス価格
*個別のベガ準備金ファクターについては、ポートフォリオマージンに関するマージンパラメータのページをご覧ください。なお、極端な市場環境においては、ベガ準備金ファクターが調整される場合があります。
C. USDT-USDC-USDスプレッド準備金:この証拠金要件は、USDC,USDTとUSDの間の交換レート変動をカバーします。
計算式
USDT、USDC、インバース契約の間にヘッジされたポジションがある場合:
USDT-USDC-USDスプレッドコンティンジェンシー = [abs(USDTのデルタ) + abs(USDCのデルタ) + abs(USDCのデルタ) - abs(デリバティブの合計デルタ)]/2 * USDT-USDC-USDコンティンジェンシーファクター ×BTCUSDインデックス
USDT、USDC、特定の通貨のインバース契約の間にヘッジポジションがない場合、最大損失はストレステストシナリオでカバーされるため、USDT-USDC-USDの偶発性はありません。
*個別のUSDT-USDC準備金ファクターについては、ポートフォリオマージンに関するマージンパラメータのページをご覧ください。なお、極端な市場環境においては、USDT-USDC準備金ファクターが調整される場合があります。
D. デルタスプレッド準備金
BTCを例に説明します。満期の異なるBTCオプションポジション、BTCUSDC先物ポジション、BTC-PERP契約ポジション、BTC現物資産を同時に保有していると仮定します。USDCデルタ準備金は、以下のように計算されます。
ステップ1:BTCリスクユニットのすべてのポジションを満期別に分類し、各満期のネットデルタを計算します。
ステップ2:互いにヘッジされた、さまざまな満期のデルタを以下の式で計算します。
Min[abs(ロングデルタ), abs(ショートデルタ)]
-
ロングデルタ = Sum(満期日のプラスのネットデルタ)
-
ショートデルタ = Sum(満期日のマイナスのネットデルタ)
ステップ3:合算の時間差を以下の式で計算します。
ABS(TL - TS)
-
TLは、ネットデルタがプラスのすべての満期に関する、デルタ加重での満期までの日数です。
TL = Sum[(ネットデルタがプラスの満期に関する満期までの日数) × ABS(当該満期のネットデルタ) ÷ Sum(ネットデルタがプラスの全満期に関するデルタ)]
-
TSは、ネットデルタがマイナスのすべての満期に関する、デルタ加重での満期までの日数です。
TS = Sum(((ネットデルタがマイナスの満期に関する満期までの日数) × ABS(当該満期のネットデルタ) ÷ Sum(ABS(ネットデルタがマイナスの全満期に関するデルタ)))
ステップ4:USDCデルタ準備金を以下の式で計算します。
合算の時間差 × ヘッジのデルタポジション × BTC-USDインデックス × BTCのデルタ準備金ファクター
注:
— USDC無期限契約の場合、設定された満期日を2日目とみなします。つまり、満期日までの残り日数は常に1日となります。
— BTCおよびETHのデルタ準備金ファクターは0.03%です。
ステップ5:リスクユニットで現物が保有されている場合、現物とデリバティブの間のスプレッドリスクを考慮する必要があります。
保有通貨が0を上回る場合、現物のスプレッドリスクは以下の式で計算されます。
abs(ヘッジに利用される現物資産) × インデックス価格 × max(加重ベース × ベースリスクファクター ÷ インデックス価格 - min(1 - 担保価値比率 - 2%, ベース安全余裕率), 0)
保有通貨が0を下回る場合、現物のスプレッドリスクは以下の式で計算されます。
abs(ヘッジに利用される現物資産) × インデックス価格 × max(加重ベース × ベースリスクファクター ÷ インデックス価格 - min(借入資産の維持証拠金率 - 2%, ベース安全余裕率), 0)
リスクユニットのネット保有通貨が0の場合、現物のベースリスクは0になります。
注:
— ヘッジに利用される現物資産は、ポートフォリオマージンモードにおいてヘッジのために利用される現物資産の額です。これらの現物資産はストレステストに含まれ、全体の証拠金要件を引き下げる場合があります。したがって、これらの現物資産をUTAから振り替えることはできませんが、現物取引には利用できます(注文確認の対象となります)。Bybitは定期的に、ポートフォリオマージンモードにおけるヘッジについて現物資産の最大配分額を計算し、潜在的な損益を評価します。次に、算出された額をUTA内の既存の保有現物と比較し、絶対値が最も低いものを選択します。デリバティブ取引には動的な性質があるため、この値は、UTA内の状況変化に応じて変動する可能性があります。リスクユニットが無期限または先物ポジションのみを含むシナリオでは、この値はデリバティブのデルタ値に (-1) を乗じたものとほぼ等しくなります。ただし、UTA内の現在の現物保有額を超えることはできません。
— 一部の現物資産がポートフォリオマージンモードで現物ヘッジの対象になるわけではありません。 現物ヘッジでサポートされている現物資産は以下のとおりです。
通貨 |
ベースファクター |
基礎リスクのしきい値率(%) |
BTC, ETH |
45% |
5% |
1INCH, AAVE, ADA, AGIX, AGLD, ALGO, ANKR, APE, APT, AR, ARB, ARKM, ATOM, AVAX, AXS, BAT, BCH, BICO, BLUR, BNB, BONK, C98, CAKE, CELO, CHZ, COMP, CORE, CRV, CYBER, DAI, DOGE, DOT, DYDX, EGLD, ENS, EOS, ETC, FET, FIL, FLOW, FTM, FXS, GALA, GMT, GMX, GRT, HBAR, HFT, HOOK, ICP, ID, IMX, INJ, JASMY, JTO, KAVA, KDA, KLAY, KSM, LDO, LINK, LRC, LTC, LUNC, MAGIC, MANA, MANTA, MASK, MATIC, MEME, METH, MINA, MKR, MNT, NEAR, OP, ORDI, PENDLE, PEOPLE, PEPE, PERP, PYTH, QNT, RDNT, RNDR, ROSE, RUNE, SAND, SEI, SHIB, SLP, SNX, SOL, SSV, STG, STX, SUI, SUSHI, THETA, TIA, TON, TRX, TUSD, TWT, UNI, WAVES, WLD, WOO, XAI, XLM, XRP, XTZ, YFI, ZIL, ZRX |
60% |
5% |
— ベース安全余裕率 = -2.5%
— Basis Risk Factor:BTCÐ = 45%、その他のコイン = 60%
— 加重ベースは、デリバティブの価格と原資産のインデックス価格との差を示す指標です。さまざまなデリバティブポジションの満期日や規模を考慮して計算されます。
E. 無期限および先物契約準備金
USDC無期限契約と先物契約、USDT無期限契約、インバース無期限契約と先物契約など、無期限契約と先物契約に関しては、証拠金の一部として必要なコンティンジェンシー資金を計算する必要があります。
コンティンジェンシー資金を決定する方法は以下のとおりです。
Σabs(USDC無期限および先物の数量 + USDT無期限の数量 + インバース無期限および先物の数量) × {{Risk Factor}} × 各契約の対応するUSDインデックス価格
*無期限および先物契約準備金の個別のリスクファクターについては、ポートフォリオマージンに関するマージンパラメータのページをご覧ください。なお、極端な市場環境においては、リスクファクターが調整される場合があります。
注:
— 極端な市場環境においては、リスクファクターが調整される場合があります。
デリバティブでアクティブ注文がある場合の維持証拠金
Bybitでは、デルタに応じて、デリバティブのアクティブ注文が2つのグループに分けられています(デルタがプラスのグループ、デルタがマイナスのグループ)。次に、各グループはデリバティブポジションと組み合わされて、ポートフォリオを形成します。アカウントのデリバティブ維持証拠金(MM)は、2つのポートフォリオとデリバティブポジションの間における最大のMMです。
例:
デルタがプラスのオープン注文A、デルタがマイナスのオープン注文B、およびポジションCがアカウントにある場合、UTAにおけるデリバティブの維持証拠金 = MAX(MMR(ポートフォリオ_C), MMR(ポートフォリオ_ [A + C]), MMR(ポートフォリオ_ [B + C])) となります。
必要証拠金
必要証拠金 = 維持証拠金 × IMファクター
*各リスクユニットのIMファクターは、実際の状況により異なる場合があります。個別のIMファクターについては、ポートフォリオマージンに関するマージンパラメータのページをご覧ください。
強制決済プロセス
借入資産を保有している場合、維持証拠金率が85%に達した時点で、借入資産が全額返済されるまで自動返済が行われます。
借入資産を保有していない場合、維持証拠金率が100%に達した時点ですべての注文が取り消され、維持証拠金率が90%に低下するまで部分強制決済が行われます。
詳細については、取引ルール:強制決済プロセス(統合取引アカウント)をご覧ください。