アービトラージ取引は、異なる市場における資産の上場価格の価格差から利益を得る投資戦略です。暗号資産市場において最も一般的なアービトラージ戦略は、現物先物アービトラージ、資金調達率アービトラージ、先物アービトラージです。
Bybitアービトラージとは
Bybitアービトラージは、トレーダーが異なる市場における価格差により生じる短期的な取引機会を得るために設計された取引ツールです。Bybitアービトラージを使用することで、トレーダーは、2つの通貨ペアまたは契約の注文板と流動性を同時にモニターし、注文の正確な履行を可能とする効率化されたプロセスを通じて両レッグを発注できます。
Bybitアービトラージは、資金調達率とスプレッドのアービトラージの機会を提供します。
1. 資金調達率アービトラージは、現物と先物の両レッグ(同じ金額で異なる方向)を発注します。原理としては、潜在的な損失を潜在的な収益で相殺し、それと同時に資金調達料を得るものです。資金調達料がプラスの場合、この戦略では現物を買い、無期限のショートポジションを取ることで、安定して資金調達料を得られます。これをポジティブアービトラージといいます。反対に、資金調達料がマイナスの場合、トレーダーは現物をショートし、無期限をロングすることで、資金調達料から安定して利益を得られます。これをネガティブアービトラージといいます。
仮に、BTCUSDT無期限の資金調達率が現在+0.01%とします。ショートポジションの保有者は、ロングポジションの保有者から資金調達料を受け取ります。したがって、田中さんはアービトラージツールを活用して、現物市場で1 BTCを買い、価格上昇による利益を得ると同時に無期限市場で1 BTCを売り、価格下落による利益を得られます。このヘッジポートフォリオによって、田中さんは1つの市場における潜在的な損失ともう1つの市場における利益とのバランスを取り、それと同時に資金調達料を得られます。
2. スプレッドアービトラージは、異なる市場で資産を同時に売り買いすることで、価格差から利益を得ます。
利用者は、アービトラージツールを使用して、異なる市場で同一の資産を売り買いするスプレッドアービトラージを行うことができます。たとえば、現物市場におけるBTCの取引価格がBTCUSDC先物契約を下回る場合、現物市場でBTCを買い、BTCUSDC先物契約を売ることで、価格差から利益を得られます。この戦略は、契約が期限切れとなった時点で最終的に先物価格と現物価格の価格差が縮小することによって利益を得ることを狙います。
現在、アービトラージツールはBybitアプリでのみ利用でき、クロスマージンモードを使用する統合取引アカウントの利用者のみが対象です。統合取引アカウントに更新するには、こちらの記事を参照してください。
Bybitアービトラージは、USDT無期限、USDC無期限、USDC先物をサポートしています。以下の通貨ペアでアービトラージ取引を行えます。
- 現物(USDT)とUSDT無期限
- 現物(USDC)とUSDC無期限
- 現物(USDC)とUSDC先物
商品の特長
アービトラージの機会:Bybitアービトラージにより、アービトラージの機会をすばやく特定できます。このインターフェースは、資金調達率またはスプレッドに基づき通貨ペアを整理し、トレーダーが潜在的なアービトラージの機会を直接視覚的に理解できるようにします。
- 資金調達率のランキング:この機能は、さまざまな通貨ペアの資金調達率を降順でリスト化しています。現在で最も資金調達率が高い通貨ペアを明確に視覚化することで、トレーダーが資金調達料から利益を得られます。
- スプレッドのランキング:この機能は、さまざまな通貨ペアや契約で取引される資産の市場価格を表示します。トレーダーは、スプレッドのランキングを参照し、最も価格差が大きい通貨ペアを特定することで利益を得られます。
両レッグを取引:1つのインターフェースで2つの通貨ペアの価格変動と流動性を簡単にモニターし、1回タップするだけで両方の通貨ペアを取引します。
スマートリバランス(デフォルトで有効):スマートリバランスは、約定済みの注文を2秒ごとにモニターすることで、ポートフォリオのバランスを取ります。1つのレッグの約定済み注文数がもう1つのレッグの約定済み注文数と異なる場合、約定済み注文数が両レッグで同じになるよう、スマートリバランスによって自動的に成行注文が行われます。1ラウンドごとのスマートリバランスは24時間有効です。24時間後、未約定注文はキャンセルされます。
たとえば、トレーダーがレッグAで1 BTCの現物買い指値注文を行い、レッグBで1 BTCの無期限売り指値注文を行うとします。発注後、システムにより両レッグの取引数量が2秒ごとにチェックされます。レッグAにつき0.5 BTC、レッグBにつき0.4 BTCが約定されたとします。このとき、数量調整のため、システムによりレッグBについて0.1 BTCの成行注文が行われます。すべての注文の約定が完了するか、24時間の有効期限に達するまで、システムは2秒ごとにチェックを続けます。
80種類を超える担保資産:統合取引アカウントにおいて、トレーダーは80種類を超える資産をアービトラージ取引のマージンとして使用できます。アービトラージの維持証拠金のしくみは以下のとおりです。
- BTCの最終取引価格(LTP)が現在30,000 USDTとします。トレーダーの統合取引アカウントに証拠金が30,000 USDTあり、トレーダーは現物注文と無期限注文を同時に発注できます。つまり、1 BTCの現物資産を無期限契約で1 BTCをショートするためのマージンとして使用することで、トレーダーはポジティブアービトラージから利益を得られます。
- トレーダーがBTCを現物で保有しているとします。BTCの現物と期先のスプレッド差が開いた場合、トレーダーは、保有するBTCをマージンとして使用することで、同額の期先のBTC先物についてショートポジションを作成できます。この場合、BTCの価格変動によりトレーダーの強制決済リスクが増加することはありません。トレーダーは、BTC先物が期限切れとなり、スプレッドが縮小すると、スプレッドから利益を得られます。
リスク
— アービトラージは、利用者がAPIを使わずに同時に発注できるツールです。これは利益を保証するものではなく、利用者は強制決済リスクにさらされることがあります。
— スマートリバランスは、成行注文を行うことでトレーダーのポートフォリオを自動的にリバランスするため、当初の設定価格から乖離することがあります。
— アービトラージツールは、利用者によるポジションの管理や決済を支援するものではありません。トレーダーには、積極的にポジションを管理する責任があります。
アービトラージ注文を行うには
Bybitアプリの場合
ステップ1:取引ページに移動し、「ツール」をタップして「アービトラージ」を選択します。
ステップ2:資金調達率またはスプレッドに基づき、アービトラージ取引を行う資産を選びます。
ステップ3:注文方法
- 希望する通貨ペアをロングするか、ショートするかを選びます。両レッグの金額は常に同じですが、方向は反対となります。最初のレッグの方向を選ぶと、もう1つのレッグの方向がシステムにより自動的に決定されます。
- 成行注文または指値注文の選択:注文価格を入力すると、通貨ペアの横に資金調達率またはスプレッドレートが表示され、アービトラージのコストを推定できます。
- 注文数量の入力:利用者は、1つのレッグを約定する必要があります。システムにより自動的にもう1つのレッグが約定されます。
- スマートリバランスの有効化:ポートフォリオのリバランス機能を有効にすると、1つのレッグが約定される一方で、もう1つのレッグが長期にわたり約定されないリスクが軽減されます。これはオプション機能ですが、デフォルトで有効です。
ステップ4:「両レッグを取引」をタップして、注文を「確定」します。
ステップ5:「ツール」→「アクティブ」から、アクティブなアービトラージ注文を確認します。注文が完全に約定されたら、「ツール」→「履歴」に移動し、注文履歴をチェックします。
ステップ6:発注後、ポジションと資産を積極的に管理することを強くお勧めします。
- ポジションを確認するには、「無期限・先物取引ページ」→「ポジション」に移動します。
- 現物資産を確認するには、「現物取引ページ」→「資産」に移動します。
- 資金調達料の詳細は、統合取引アカウントの資産ページの「取引履歴」で確認できます。
よくある質問(FAQ)
アービトラージ注文を行うのに適切な時期はいつですか?
お客様は、以下のシナリオでアービトラージを活用できます。
- 2つの通貨ペアにスプレッドがあるとき、アービトラージにより短期のスプレッドを固定し、市場変動によるスリッページを最小限に抑えられます。
- 大口注文を行うときや、市況によりすみやかな行動が求められる場合、両レッグを取引することで、コストを管理し、市況の変化による潜在的なリスクを軽減できます。
- 複数レッグ戦略を行うときや、複数ポジションを決済するとき、アービトラージにより両レッグの取引を正確に約定し、機会損失やポジションの未決済を防ぎます。
スプレッド、スプレッドレートならびに資金調達率およびスプレッドの推定APRを計算する方法
- スプレッド = 売却シンボルのLTP - 購入シンボルのLTP
- スプレッドレート = (売却シンボルのLTP - 購入シンボルのLTP) ÷ 売却シンボルのLTP
- 資金調達率のAPR = abs (3日間累積資金調達率) ÷ 3 × 365 ÷ 2
- 3日間累積資金調達率 = ∑ (過去3日間におけるすべてのインターバルの資金調達率)
- スプレッドのAPR = abs (現在のスプレッドレート) ÷ 最大期間 × 365 ÷ 2
- 最大期間 = 期限切れまでの日数
アービトラージをポジションの決済に使用できますか?
はい。アービトラージにおいて、ポジションの新規建ておよび決済は認められています。
サブアカウントでアービトラージはサポートされていますか?
はい。サブアカウントが統合取引アカウントであればサポートされます。
デモ取引でアービトラージは利用できますか?
現在、アービトラージツールはデモ取引では利用できません。
アービトラージの強制決済リスクとはなんですか?
両レッグが部分約定された場合、両レッグのリスクエクスポージャーが不均衡になるため、強制決済リスクが生じることがあります。そのため、スマートリバランスを有効にすることをお勧めします。この機能は、両レッグの約定済み注文の数を定期的にチェックし、バランスを取るために自動的に成行注文を行うことでリスクエクスポージャーを低減させます。
アービトラージはどのマージンモードで機能しますか?
アービトラージは、統合取引アカウントのクロスマージンモードで機能します。
アービトラージ注文が完了しなかったのはなぜですか?
統合取引アカウントにおいて利用可能なマージンが両レッグの注文に不十分だった場合、注文は完了しません。したがって、注文数量を調整してください。
スマートリバランスを無効にするとどうなりますか?
スマートリバランスを無効にすると、両レッグの注文数がシステムにより自動的に調整されることはありません。そのため、トレーダーは、確定ボタンをタップした後、両レッグの注文を一度に行うことが想定されます。注文は、完全に約定されるまでキャンセルされません。
アービトラージ注文が完全に約定されていないにもかかわらず、スマートリバランスが停止したのはなぜですか?
スマートリバランスが有効になると、両レッグの注文が24時間以内に約定されない場合、リバランス戦略が自動的に停止し、未約定注文はキャンセルされます。
注文が完全に約定された場合、どこでポジションまたは資産を確認できますか?
両レッグの注文が完全に約定されると、リバランス戦略は完了します。現物、先物または無期限注文を確認するには、それぞれの「注文履歴ページ」に移動します。
無期限・先物のポジションについては、「デリバティブ取引ページ」の「ポジション」をタップします。現物取引の「資産」リストに移動し、「取引履歴」から現物資産および資金調達料の確認ができます。
スマートリバランスが有効化された後に、両レッグに不均衡が生じるのはなぜですか?
以下の原因が考えられます。
- リバランスの処理中に維持証拠金が不十分になった。
- 市場の流動性が低く、注文が約定されなかった。
「現物取引ページ」または「デリバティブ取引ページ」で注文をキャンセルした場合、アービトラージ注文に影響しますか?
2つのシナリオが考えられます。
- スマートリバランスが有効な場合:1つのレッグの注文がキャンセルされた場合、もう1つのレッグの未約定注文は自動的にキャンセルされ、アービトラージ戦略は停止します。
- スマートリバランスが無効の場合:両レッグは独立して売買されます。最初のレッグの未約定注文がキャンセルされると、アービトラージ戦略は、もう1つのレッグが約定されるか、キャンセルされるまで続行され、約定またはキャンセルをもって終了します。